1話 非日常の始まり
白崎篤紫、三十八歳。 今日の予定は、家族三人で某夢の国……のはずだった。 篤紫は、車のハンドルを握ったまま、空から降ってくる光のシャワーを、大口を開けて見つめていた。 車のエンジンとモーターは、計…
白崎篤紫、三十八歳。 今日の予定は、家族三人で某夢の国……のはずだった。 篤紫は、車のハンドルを握ったまま、空から降ってくる光のシャワーを、大口を開けて見つめていた。 車のエンジンとモーターは、計…
ゆっくりと意識が戻ってくる。 重い瞼を無理矢理開けると、周りに明るさが戻っていた。 「ここは……どこだ?」 あらためて状況を確認してみる。 特に、車が移動した感じはなく、まだ峠のてっぺんにいるみたい…
膠着状態が続いていた。 遠巻きにまわりながら、オオカミの赤い目がこちらを狙っていた。 その数十匹。 そもそも、体長がが四メートルにも達する大型のオオカミ。 雪景色の林の中、漆黒の多毛は否応なしに存…
雪の中、一時間かけてたどり着いた街は、高さ四メートル程ある壁に囲まれていた。 「ね、ねぇ。篤紫さん……」「ああ、この風景は、たぶん知っている――」 門をくぐると、目の前に既視感がある湖が広がっていた…
入国審査を無事終えて、正式にスワーレイド湖国の街に入ることができた。 既に、時刻は夕方になろうとしていた。 辺りが徐々にオレンジ色に染まっていく。 北門から続く大通りが遙か向こうの西門までまっすぐ…
あたしは夏梛、十歳で小学校四年生だよ。 親友の由奈ちゃんとは、保育園から一緒なんだ。 でも最近あまり仲良くできていなかったから、お土産に雪だるまのぬいぐるみを買って帰りたかったんだけど、買えなくなっ…
「すごいでしょ、カレラちゃんに教えてもらったんだ。 お水とか、火とかも出せるけど、さすがにお家の中だと水浸しになったり、火事になったりしちゃうから、使っちゃだめなんだって」 夏梛とカレラちゃんが、それ…
朝から天気は快晴で、空気が澄んでいるのか、空の青さが深かった。 大通りは朝の喧噪に包まれていて、行き交う馬車が上手にすれ違っていた。馬の蹄の音が心地よいリズムを刻んでいる。 道路と歩道の間には、冬の…
隣でメイルランテ魔王に頭を下げている篤紫を見ながら、桃華は大きなため息をついた。 ときどき篤紫さん思い込みで暴走するのよね。 昨日はすごく頼もしかったけれど、一旦何かのスイッチが入ると、精神レベルが…
オルフェナからの着信は、そもそもあり得ない。 そもそもオルフェナは自動車メーカーが付けた車の名前で、いわゆる大衆車に当たる車だ。 八人乗りのミニバンで、ガソリンと電気のハイブリッド自動車なのだけど、…
あれから数日、タナカさんのお宅にお世話になった。 羊のオルフェナは喋るペットとして、普段は夏梛が大事に抱えている。オルフェナの方も満足しているようで、とりあえず問題はなさそうだ。 どうやら車の状態と…
タカヒロさんの生家は、タナカさんの家から百メートルほど離れたところにあった。 案内を終えて、仕事に戻るタカヒロさんを見送って、白崎家の三人は新しく我が家となる家を見てみることにした。 家の作りは、…
「ねえ、オルフ?」『ふむ……そう言えば、お嬢がよく見ていたアニメに、似たような名前の雪だるまがいたな。我は毛だるまだが。 ところでどうしたのだ? お嬢…』「夏梛よ」『ん?』 抱きかかえていたオルフェナ…
ユリネさんがお休みということで、かねてから行く予定だった探索者組合に向かっている。 実はここに来て、初めて家族別行動になった。 夏梛はカレラちゃんと一緒に、午前中いっぱいはシズカさんに魔法の基礎や…
「あ、アツシさんごめんなさい……」 ユリネさんとサラティナさんの話がようやく終わったようだ。 女性の世間話は、どこの世界でも長いらしい。そんなことを考えながら抱きかかえたオルフェナをもふもふしていた。…