「変形するぞ。ミモザ、シートベルトは――」
「四点のを、しているわっ! 大丈夫よ!」
「よしっ、変形だっ」
レイジの掛け声とともに、空中を舞っていた機体が変形を始めた。
ただ……これは結構きついわね。
走るだけなら人型形態でも二輪形態でも、姿勢制御のおかげで揺れが少なく安定していたのだけど、そうじゃなくて今みたいにアクロバティックな動きをしているときはさすがに、姿勢制御は一切の効果がなかった。
この無理な動きこそが、巨大ロボット物の真髄だって言っていた人、一回、中に乗ってみたらいいと思うわ。絶対に無理よ、こんなの。
「うぐぅっっ……」
女の子が出しちゃいけない声が、口から漏れ出る。
この座っているシートに何か感覚をリンクさせるような細工がされているのかな、自分で操縦しているわけじゃないのに、機体の動きがまるで自分の手足を動かしているかのようにダイレクトに感じられる。ただそれとは別に、機体の動きに合わせて振り回される体は体で、ちゃんと動きを感じているから厄介なの。悲しいことに自分で操縦していないから、二重の感覚はちょっとだけずれている。
目眩とこみ上げてくる吐き気に、慌てて口元を抑えた。
「うっ、ぐふっ――」
背面のジェット機構で急制動して、巨大な蛇の方に機体の正面を向ける動きをしたときに、強烈な慣性力で体が横に持っていかれそうになる。シートベルトが四点式だからその程度ですんだけど、車によくあるような三点式だったらヤバかったわ。
道路に横たわっている蛇の胴体が、ものすごい速度で動いている。
その大蛇の頭が、森から猛烈な勢いで飛び出してきて、大きく開けた口から炎の塊を吹き出してきた。
「なんだとっ、火を吐くのかっ!」
慌ててレイジが機体を回転させながら、背面の大剣を抜く勢いのまま大剣の腹で炎塊を打ち流す。
間髪入れず噛み付いてきた蛇頭を脚で蹴って勢いをそらすも、相手の重量のほうが大きいからかあっさり吹き飛ばされた。当然、機体の吹き飛ぶ勢いに合わせて、中に乗っている二人も振り回されるわけで――。
「ううぅっ。何よこれ、動きが滅茶苦茶じゃないのっ」
「こんなもんだぞ、うわっと。危ないな!」
上から振り下ろされた尻尾を片手でいなして、間一髪で躱した。背面ジェットを吹き出して一旦態勢を戻した直後に、振り戻って来た尻尾に吹き飛ばされた。
「きゃあああぁぁぁ」
「反則だろうよ、これはっ! ちったぁ加減しろって、やばい左腕がイカれた――」
吹き飛ばされて錐揉み状態で宙を舞った機体は、左肩から地面にぶつかって、何度か跳ね上がって転がってうつ伏せの状態で止まった。
うん。そもそも相手はね、巨大な蛇は爬虫類だから加減とか無理だと思うわ。襲ってきたのだって、先に私たちがぶつかったからだもの。
そんなことを、目眩を必死に堪えながら思った。私の前ではレイジが、必死に操縦桿を握ったている。
外部温度センサーがけたたましく鳴り響く。咄嗟にその場から弾けるように飛び退くと、飛んできた炎塊が地面を抉り、続けざまに大爆発を起こした。
「ちくしょう。設計段階で対人か、同じような人型ロボットとの戦闘しか想定していないから、こんな巨大生物なんて対処が追いつかんぞっ」
「ねぇパパ。武器はっ、使える武器は何か他にないのっ!?」
「火器は四つ装着してるが、左腕にあるのはもう駄目っぽいな。あと使えるのは、右手のマシンガン、背面に二基あるレーザーカノンだ。そのうちミモザに操作してもらえるのは背面の二基だけだが」
「それって光線銃なの?」
「