六十三話 旧勇者と魔王

「それでペアチェは、どうして俺を城に連れて行きたいんだ?」 篤紫の質問が意外だったのか、ペアチフローウェルは目を見開いた。しばらくすると、その相貌に涙を湛え始めた。『せっかくお友達になれそうだと思った…

六十二話 コーディアル・パープル

 篤紫が天井を見上げると、天井には染み一つなかった。さすが王族の別荘なだけあって、部屋の隅まで掃除が行き届いている感じだった。 天井からつり下げられた明かりが、柔らかい光を放っていた。照明に魔石を使う…

六十一話 魔王ペアチフローウェル

 気まずい空気が流れる。 正直急いでいて、尖塔の部屋に誰かがいることを確認する余裕は無かった。そもそも、彫像のように固まっている相手に、気づけという方が無理なのだけれど。「貴方たちが、メルディナーレを…

六十話 予測不可能

「それでは、今度は私が様子を見に行ってきますね」 外に出ていた篤紫が城の応接室に戻ると、リメンシャーレが待っていて、入れ替わりで外に偵察に出かけた。それを見送ってから、部屋の真ん中にある豪華なソファー…

五十九話 虚と実の境目

 大きな穴を掘り、篤紫と執事のポルナレフは、亡くなった騎士達と、二人の侍女。同じく亡くなった馬を丁重に埋葬した。 首を飛ばしたワイバーンは、時間がなかったので取りあえずホルスターのポケットに収納してお…

五十七話 桃華の世界

 気がつくと、森の中に立っていた。 桃華に魔力を流したときに立っていた位置に、ちょうど夏梛とリメンシャーレも立っていた。「……ここが、おかあさんの神晶石の中?」 柔らかな風が、木々の梢を揺らしていた。…

五十六話 不調の原因

 店の前で立っていても仕方がないので、全員で中に入ることにした。 中ではコマイナが、それこそ心配そうな顔で佇んでいた。「篤紫様……桃華様の様子が変だったのです……」 今日、一番最初に桃華に会ったのは、…

五十五話 桃華のわがまま

 城門をくぐって少し進むと、いつもの衛兵が天幕の前に立っていた。篤紫に気づくと、笑顔で手を振ってきた。しかし、この衛兵は昨日もここにいた気がする。いつ休んでいるのだろうか?「こんばんは。今日は非番で、…

五十四話 ナナナシアストア

「あー、ルーファウス君。すまん……」 ルーファウスの分の魔道ペンを作って向き直ったところで、椅子に座って篤紫の手元を見たまま、目を見開いて固まっているルーファウスに気づいた。そういえば、篤紫が魔道具を…

五十三話 魔道ペン

 ユーイチと魔道コンロの修理代金の話になったところで、ルーファウスが間に入って来た。そこでユーイチを、王宮のお抱え料理人として招きたいと打診してきた。 当然ながら、ユーイチは即座に了承していたのだけれ…

五十二話 ルーファウス王子

 新しい魔道コンロが完成する頃には、周りで復興作業をしていた人たちも、気になったのか見に来ていた。お店が半分崩れてオープンになっていることもあって、けっこうな人だかりになっている。「ユーイチさん。火の…

五十一話 新生魔道コンロ

 せっかく作り直すのなら、壊れにくくかつ料理をしやすいコンロにしたい。料理人向けに、火力強めで。 そんなイメージで、図面を描いてみたのだけれど……。「ねえ、おとうさん? 絵が下手すぎて、何を書いてある…

五十話 同じ顔は三つある?

 二人に案内されて向かった先は、地竜が通過した跡に近い場所だった。 店は半分ほど崩れていて、コンロは無事だった方に置かれているようだ。もっとも、建物が半分でも崩れていれば、中のものが無事であるわけがな…