四話 目が覚めたらダンジョンの中だったんだけど。

『簡単に言えば、地球には『魔力』と呼ばれるエネルギーがほとんど無く、逆にナナナシアには『魔力』で満ちていたわけだが、それが今回の事態を引き起こした。
 ほぼ同時に起きた、地球側の巨大自然災害と、ナナナシア側の魔女王の過去転生による強大な魔力異常が共鳴し、別並行世界だった二つの世界が部分的に重なり、そして繋がった』
 思った以上に、異常な事態だった。
 羊はそれまでじっと、僕の目を見つめていたんだけど、そこで目を伏せた。

『……そして、お主だ』
「いや待って。それと僕が何か関係あるの?」
『そうだな。恐らく遺憾に思うであろうが、ナナナシア側の魔女王が転生する切っ掛けとなった未来の起点がな、お主だ。ついでに今回の地球の天変地異の起点も、お主だ。これは世界書庫にはっきりと記されておる』
「……え? は? いや、僕は何もしていないんだけど」
 そもそも、世界書庫って何なのさ。

『世界書庫は、アカシックレコードの名前で聞いたことあるであろう。世界書庫には、三十二億全ての世界における爆発機点からの記録が記されており、我はその世界書庫の一端末だ。とはいえ、有事の観測が主でそれ以上の権限は無い。
 まあ、今の事態が観測すべき事象であるわけだが。そして、遙か未来においても一度、観測手としてこの星には降りている』
 エリクシル液の排出に合わせるように、ゆっくりと体が横に倒れていく。手足の感覚が徐々にはっきりとしてきた。
 完全に横倒しになった後、背中の板がゆっくりと足下に向かってスライドしていく。

「待って、この星ってどういうこと?」
『主は、方舟と呼ばれる舟に乗っておってな、一度地球を出ておる。そして舟ごと世界を跨いだ後、ナナナシアに墜落したのだよ。だがしかしここは、その方舟ではないのだがな』
「方舟に乗ったのに方舟じゃないって、何かの謎かけかな……?」
 体全体が入っていた容器から出たところで、背中の板が動きを止めた。
 ゆっくりと体を起こすと、薄暗かった部屋がゆっくりと明るくなっていく。

 広い部屋だ。
 壁一面に、人が立って入れる大きさのガラスの筒が並んでいて、僕はそこに入っていたみたいだ。ざっと見た感じ、どの筒も空っぽだ。
 部屋の中央にはテーブルがあって、そのテーブルの上に相変わらず小玉羊が乗っている。

「ここは?」
『エリクシルコフィン収容室の一つだな。日本国専用の移民艦の一つで、ここは緊急時用の予備設備扱いのようだ。
 通常、移民艦のエリクシルコフィンは健康な人間が入り、ディープスリープ状態で眠りにつく仕様だ。理論上、細胞を最盛期に再生、蘇生し続けることで、数千年生きられる。そして移民先の星で蘇生されるわけだ。
 事故で体を激しく損傷したお主は、緊急処置としてここに収容され、そのまま眠りについて追ったと、世界書庫に記録されておる』
「……僕個人の記録まで記録されてるの? 世界書庫、凄すぎるんだけど」